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icon of stewpot CENSORED・打码・떡모あるいはザコ海苔の概念について

新しい同人作品ビューアに入れたい新機能はないかと意見を求められて、私はCENSOREDなんかどうだろうと答えた。「へー、CENSORED? なにそれ?」ときょとんとした顔で軽くGeminiに尋ねると「ふーん、エッチな画像にわざわざ自分でモザイクを入れるんだ。アングロスフィアのキンク層で流行ってて……変なの」と少し笑う。

さらにしばらく考えてから「でも、このアプリの正式名称って『CHEck Digital Rights Sovereignty』なんだよね。デジタル主権を守ろうって印象がブレない?」と怪訝な顔をした。

いや待て。モザイクとデジタル主権が矛盾するっていう発想はおかしい。それは日本のモザイクが刑法175条に強制されているからだろう? モザイクは強制的にコンテンツの所有権を奪っているとか、作品の完全性を毀損してるとか、そういう理屈だ。でも、国家にモザイクをかけさせられるのと、自分でモザイクをかけようと決めるのは全然違うんだ――

――というような反論をしたかったのだが、前提や歴史的経緯の説明が込み入って伝わらなかったらしい。もしかしたら通信状況が不安定なのかも……いや嘘。ただ私が早口だっただけだ。

「んー、まぁいいよ。そんなに欲しいなら入れておくね~」

そう言って通話が切れる。私は静かになった一人のデスクで、CENSOREDの概念についてどう説明すれば伝わるだろうかと考え始めていた。

CENSOREDの中心

まず、CENSOREDという概念は、もともとアングロスフィアのキンク層――要は英語圏のヘンタイたち――を中心に流行している文化である。CENSOREDの大きなコミュニティが存在するRedditは英語圏中心の巨大掲示板サイトであり、寄せられる投稿もほぼ英語なのもその証左になる。

Reddit以外にも、例えばDiscordではCENSOREDが目的のサーバー1がいくつか存在する。また、Xでも英語圏を中心にCENSORED画像を投稿する女王様的なキャラクターを演じるアカウントが乱立しつつある。国や地域によっては、政治的あるいは宗教的理由でTelegramやQQといった閉じた地下コミュニティで交流するしかないケースもあるだろう。

同じような概念はヨーロッパや中東、東南アジア、東アジアでも散発的に流行っているようだが、各国のコミュニティとしては小規模で、より多くの刺激を求めて英語圏のコミュニティに合流することも多い。そのため、日本を含めた英語圏以外でもCENSOREDという語がそのまま借用されがちである。

もしこれが英語圏発祥でなければ、打码2、떡모3、ザコ海苔4なんて言葉が先に生まれて、HENTAIよろしくZAKONORIという概念が輸出されていたに違いない。実は日本産のHENTAIポルノはCENSOREDの素材として使われがちなのだが、当の日本ではモザイクは単に悪しきものと捉えられているのも面白い点である。

さて、まずはCENSOREDの雰囲気を味わうために、r/Censoredforbetasを眺めてみるとよい。成人向けのサブレなので、まずは適当にアカウントを作る必要がある。英語に(そしてCENSOREDに)慣れていなくても、上から最新の投稿を2~3枚revealすればどんな投稿が人気を集めているか分かるだろう。

CENSOREDの外面

職場でこの記事を読んでいる、あるいはRedditに5chのような警戒心を抱いている(これ自体は正しい)、もしかしたら実際のCENSORED画像を見てもピンと来なかった人のために、もう少しCENSOREDの外面的概念について掘り下げていく。

CENSOREDをごく外面的に定義すると、「隠すべき場所を隠す」というコア概念しか残らない。キンカーたちの屈折した興奮を無視すれば、その定義はシンプルで無味乾燥なものだ。この定義には日本でいうところの、国家が表現を直接的に規制する「検閲5」や、刑法175条の適用で間接的に圧力をかけて行われる「自主規制」も含まれている。

アダルトビデオやエロ漫画で性器にかけられるモザイクや黒塗りはもちろん、「見せられないよ!」というフリップでエッチなシーンを隠すキャラクター6とか、昔のテレビ番組で映り込んだ乳首をハートや星のマークで隠していたのも、外面的には全てCENSOREDである。

しかし、CENSOREDがこれらの概念と全く異なる点は、モザイクの範囲がこれらより広く強く大きくなりがちな部分と、検閲した部分に文字を重ねる文化にある。パブリッシャーが仕方なく施す自主規制は、陰茎の上に細い黒の長方形7を数本乗せたほぼ建前の修正や、外陰部ギリギリを攻めたモザイクに落ち着く。一方で、CENSORED画像は全く異なる方向に進化を続けている。

CENSOREDでは性器はもちろん、性的な印象を与えうる胸や尻にまで大きくモザイクをかけ、腹部、脚、脇、そして顔――最後は全身をピンク色に塗りつぶして「ベータは閲覧禁止」のような文字列で埋め尽くしたりする。よく見るとエッチ……ですらない普段着を着た笑顔の女性の写真でさえ、その姿はすっかり隠されてしまう。このキンカーの文化において、モザイクは女体を隠す無用なオマケではなく、性的興奮を生み出すオカズになるからだ。

一方で、CENSOREDにおいて隠し方や入れる文字のバリエーションはかなり多様である。脇のみをアイリスアウトのように抜き出して表示したり、モザイクではなくイラストやロゴで隠したり、ゲーム仕立てで射精を制限するような内容だったり、「アルファ」あるいは黒人男性との比較8で劣等感を煽るものなど、素材の出所こそ怪しいがクリエイティブな作品が多い。

つまり、単にモザイクが表示されるだけで興奮するよう訓練されている、と考えるとわずかに誤解を生む。誤解を恐れず分かりやすさを優先すれば、CENSOREDの世界観を伝えるためのモザイクを用いた創作である。日本で言うところの「文字コラ」に近いだろう。

CENSOREDの周辺

ここで、CENSOREDの理解のために、日本でもある程度流行っているエロコラージュ系の文化についても触れる。いわゆる文字コラや剥ぎコラ、水玉コラといったものだ。CENSOREDも含め、これらは「ないなら作るしかない」の精神性から生まれていて(これは二次創作者が特に大好きなフレーズだ)、そのせいか出所が怪しい素材から作られることも多く、特定の個人を貶めたりイメージを低下させかねない危うい表現が氾濫している。

女体の写真や動画を集めて編集し、同好の士と共有するという点では共通のコラージュ手法だが、方法と目的はかなり異なる。

剥ぎコラは着衣部分を肌に置き換えることで、水玉コラは着衣部分を隠すことで、画像に写った身体の裸を再現しようとする。裸を見たいという目的は共通で、それを画面に固定するか、鑑賞者の脳内で補完させるかという違いがある。文字コラは画像加工の手段に注目した分類ではなく、その画像に文章や台詞を併記して何らかのストーリーを生み出す手法である。例えば、画像部分に水玉コラを用いた文字コラもありうる。

それに対してCENSOREDは、これらの特徴の一部を組み合わせた独自の立場に位置すると捉えることができる。モザイクや黒塗りを用いて裸どころかわずかな胸の谷間まで隠そうとする点で、剥ぎコラや水玉コラとは全く逆の立場だが、「鑑賞者にモザイクの向こうを脳内で補完させる」という点では水玉コラと似た性質を持つ。

そのため、一見すると合法的に見える手段であってもCENSORED的な文脈に回収されうる。例えば、ここに卒業アルバムがあるとしよう。AIなどを用いて被写体を裸にしたり、あるいは顔を抜き出して裸体を組み合わせることは最近大きな社会問題になっている。では、被写体の顔や胸にモザイクをかけるのはどうだろう? 外形だけを見れば単なるプライバシー配慮のモザイクと変わらないが、鑑賞者によって興奮の対象になりうるのが特殊な点である。

剥ぎコラや水玉コラの逆、と考えればCENSOREDはある種「服を着せるコラージュ」と解釈できるかもしれない。ただし、モザイク――より広く特定の箇所を隠す手法――はそれ自身が「エッチなもの」というイメージを持ち合わせている。全く問題ない健全なシーンなのにモザイクをかけるとエッチに見える、という経験はそう特殊なものではない。そのため、単に「服を着せる」アナロジーにはならない点に注意が必要である。

さらに悪いことに、CENSOREDは被写体あるいは作者が意図しないストーリーを生み出すという特徴がある。この部分に注目すると文字コラとよく似ている。文字コラでは鑑賞者が画像を性的な対象とするための――あたシコ9であれ嫌パン10であれ広く様々な――ストーリーが付加されうるが、CENSOREDではより狭く鑑賞者が一方的に屈服するための契約を強制的に形成する独特な立ち位置にある。

卒業アルバムの例で言えば、モザイクの上に「ベータは一生オナニー漬け」と被写体が告げているように焼き込んでしまえば、外形的にも不適切な表現になるだろう。わいせつな表現としてよりも、本人がそのような主張をしているように見せることに問題がある。

そう考えると、CENSOREDは単なる「服を着せるコラージュ」ではなく「卑猥な言葉を書かれた服を着せるコラージュ」と呼ぶべきだろう。直接的にわいせつでなくとも、特殊な方向にイメージを低下させうる表現である。アイドルの写真を書き換えて特定の政党を支持する服を着せるようなものだ。

CENSOREDの内面

さて、CENSOREDは鑑賞者が一方的に屈服する構図を形成するための手法であると述べた。モニター越しにエッチな画像や動画に写った女性と接する妄想ではなく、あえてすりガラスを立ててまともな言葉も交わさずにオナニーを済ませる選択肢に惹かれる心理はどこにあるのか。この点についてさらに掘り下げ、CENSOREDを味わうキンカーたちの内面に迫る。

まず、CENSOREDの中心にあるのは自らを女性の下に置くマゾヒズムである。さらに、その世界観は大きく二つに分けられる。男性全体が女性に隷属するものと、男性を「女性を支配できる属性」「女性に隷属すべき属性」に二分して自らを後者に置くものである。

特にこれらの属性は、女性に触れたりセックスすることを許された「アルファ男性」や、女性の身体を見ることすらままならない「ベータ男性」と呼ばれる。この「アルファ」「ベータ」という区分はCENSOREDに特有のものではなく、恋愛や仕事における男性の格付けを示す語で、いわゆるオメガバースとも同根である。

日本で言えば「強者男性」「弱者男性」が近いだろう。CENSOREDにおいては、この屈辱的な「ベータ」概念や、英語圏における「beta」や「simp11」といった侮辱語を自らのアイデンティティとする世界観が半ば常識になっている。

例えば、「Censored by comments of some of the 21k+ people who upvoted it」では、2万票以上の高評価を集めた女性のセクシーなダンスの動画をCENSOREDしているが、その姿を隠しているのはモザイクではなく元の動画に対する賞賛のコメントである。

ここでは、女性の身体を検閲なしで見られる――ひいては触れたりセックスすることさえ許されるだろう――アルファと、そんなアルファの言葉で埋め尽くされた動画から女性の身体を想像するしか無いベータに二分されるという強烈な世界が、この短い動画の中に作り出されている。

つまり、自らを「ベータ」と自覚する男性が、検閲された画像を通じて自らの弱い立場を実感して興奮する文化圏……それがCENSOREDの核心である。

The Subreddit Where Beta Men Go to Watch Porn They Can’t See」や「Why would you want someone to say that to you?」によれば、CENSOREDを楽しむベータの理屈はおおよそ以下のようなものだ。

  • 下着姿、モザイク、裸体を隠された「見えない」状態から感じる魅力(チラリズム的な力学)
  • 女性から注目されるに値しないという屈辱を突き付けられる快感(屈服の構図)
  • 男性的競争に負けている感覚、性欲に対する罪悪感などの恥からの解放(一種のストレス発散)

これらをまとめると、CENSOREDを楽しむ動機自体は他のBDSM系――拘束や痛みを伴うSMプレイ、貞操帯、射精管理、寸止め、寝取られ――などとあまり変わるところはなく、それを画像や動画の加工で実現する点に大きな差がある。

一方的な屈辱の形成を前提としているのはCENSOREDの大きな特徴で、リアルで女性とコミュニケーションを取って特殊なプレイをする合意を得て……というステップを一切経由しない点もまさに「ベータ向き」である。文字コラや音声作品、あるいは英語由来の「JOI12」にも同様の傾向がある。

さて、ここで重要になるのが「悪意」の存在である。CENSOREDにおいて鑑賞者は屈辱的な立場に追いやられることを楽しむと述べた。これは、画像や動画に映る人物やキャラクターが自らへの検閲を自覚して、「ベータには見せない」という表明を優越的に示す……そういうベータに対する悪意の演出がなければ成り立たない。

CENSOREDは、見えないものへの想像や自らへの悪意が核になるジャンルだ。これを考慮に入れると、CENSOREDのごく外面的な「隠すべき場所を隠す」という定義をさらに深めることができる。

国家的な「検閲」や消極的な「自主規制」はベータへの悪意でかけられたものではなく、ストーリーなしでは興奮を生まないフラットなモザイクである。いわば屈服の契約もないままかけられた「悪い検閲」だ。存在する必要がない。こんなものを見せ続ければ、おそらく未成年者の性癖も歪む。

これに対して、強力なモザイクをかけられた画像を見るしかない立場を自ら選ぶのはあくまで自由だ。パブリッシャーの「自主規制」に対して、ベータが自分の責任で屈辱的な立場を選ぶ「オプトイン検閲」かもしれない。これはいわば「いい検閲」だ。

もちろん「自分で選んだ」のか「選ばされた」のかという自己認識は非常にきわどい紙一重で、この性癖はある種「インセル13」の裏返しである点には注目しなければならない。

ただし「選ばされた」という認識さえ、最終的にはCENSORED的興奮に繋がりうる。例えば、もし国家的にアルファとベータを二分する検査が布かれ、ベータに対して差別的な検閲を実施する世界があったとする。この世界でベータに対して行われる検閲は強制的な「悪い検閲」だが、最終的に彼らはその生活を肯定的に受け入れざるを得ないだろう。

実際、このような優生学的世界観でCENSOREDにストーリーを持たせて「マゾ堕ち」する過程を描く作品は数多く存在する。

これらの点から、CENSOREDは自らの責任で男性性の責任やプレッシャーを放棄することを受け入れるという、倒錯的だがある意味では健全な取り組みといえる。

CENSOREDの技術

CENSOREDな作品は自然に発生するものではない。他のエロコラージュと同様に、誰かが素材を作成・撮影・収集して画像や動画に編集をかける必要がある。無検閲の女性を拡大して胸や性器の領域に選択ツールを引く――これはベータ的世界観から見れば耐えがたいものだ。自らを女体を見ることを許さない立場に置く世界観から見ると、無検閲の画像を開くのさえ後ろめたく、抵抗がある。

そのため、多くのCENSOREDは製作者と閲覧者の属性が分かれている。r/Censoredforbetasに数多くのCENSORED作品を投稿するjb22_picsが「The Subreddit Where Beta Men Go to Watch Porn They Can’t See」に寄せたコメントによれば、自らの活動のモチベーションはクリエイティビティの発揮と「私はエッチな画像を見られるが、ベータは私が許可したものしか見られない」という支配力の誇示にあるという。

ベータは自分で自分を検閲できない、というのは根本的な問題として認識され続けてきた。しかし、近年になってこの問いに技術的な解決策が与えられつつある。それは――おそらくみなさんが想像するとおり――NudeNetを初めとした画像認識モジュールによる自動化、つまり「自動検閲」である。

自動検閲においては、製作者が行っていた隠すべき場所の検出をAIが自動で行う。「ベータが見てもいい場所」を検出するのではなく、「アルファが見てもいい場所」を検出するのだ。これは当たり前に思えるが、例えるならオレンジから甘さを取り除いてアルファに与え、ベータには苦みだけを提供するようなものである。これがAIの手で行われるというのは、ある意味でさらに屈辱的かもしれない。

2022年頃から現在にかけて、こうした自動検閲を実現するツールが増え始めている。これらはおおよそ「ブラウザ拡張でページの検閲を行う」「デスクトップ全体をキャプチャして検閲を行う」「バッチ処理で特定の入出力にCENSOREDを組み込むライブラリ」に分類できる。

ブラウザ拡張型では、Chromium系のBeta ProtectionやそのバックエンドとなるBeta Censoring、Firefox中心に開発されてきたPuryFiが代表的だ。

デスクトップキャプチャ型では、Windowsで最も人気のBeta Blockerが存在する。画面上に現れるNSFWコンテンツをリアルタイムで検出し、モザイクや黒塗りのオーバーレイで隠すのが主な機能である。最近では日本語を含む多言語UIにも対応したAndroid版がリリースされたり、一定時間CENSOREDを解除できない機能が導入されるなど、活発な開発が進んでいる。

バッチ処理型では、Stable Diffusion生成画像の局部に自動でモザイクをかけるnudenet-nsfw-censorや、前述のBeta Censoringをローカルで回して画像フォルダ全体を処理するといった使い方がある。

これらのツールを組み合わせれば、例えば「Webカメラの出力に常に検閲をかけるツール」とか「視界にARでモザイクを入れるスマホアプリやスマートグラス」の自作も容易だろう。

このように多くのツールが提供されているが、検閲箇所の検出に使うエンジンの多様性はあまりない。PuryFiが独自のニューラルネットを同梱しているのに対し、他のほとんどのツールはNudeNetに依存している。画像全体がセンシティブかどうか判断するライブラリや、画像から物体の位置を検出するライブラリは存在するが、それらを組み合わせた「画像内からセンシティブな箇所を領域で抜き出す」というのがかなりニッチな分野で、代替ライブラリが少ないのが実態である。

さらに、NudeNetはメンテナが多忙な状態でここ2年ほど活発な開発がなく、近年のAI技術の発展を活かした性能にはなっていない。小さな領域や極端なアングル、そしてイラストなどを十分に検出できないことも多く、まだ軽量化や性能向上の余地があると思われる。

ただし、NudeNetの改善のために学習データという名の無検閲の画像を収集する必要があると考えれば、ベータは検閲モジュールの改善には参加しえないというメタ的な構図は維持されてしまう。自動検閲で自らに検閲を課せるようになったはずが、その上流にはまだ差別的構造が残っている。これもまた、CENSORED世界観の面白い構造である。

CENSOREDの今後

日本におけるCENSOREDはまだまだごくマイナーなジャンルである。これは刑法175条の運用が作った実質的なポルノ検閲の構図のせいだろう。モザイクに対する「見えないことへの興奮」や「一方的な屈服」を味わうよりも先に、国家からモザイクを押し付けられているのが明らかな現状である。

これを脳内でCENSORED世界観に転換することはできるものの、「モザイクがあるのは当たり前」なのが常識である以上、さらに広げるのは難しい。日本だけではなく、東アジア全般で消極的なモザイクやぼかしが前提の状況が続いている。不自由を味わうために自由を必要とする、というのはいろいろな分野で語られる矛盾といえよう。

一方、日本では文字コラを始めとしたエロコラージュの文化はある程度広く根付いている。前述の通り、文字コラとCENSOREDは勝手なストーリーを付与して興奮の材料に持ち込む点でよく似ている。日本産のポルノがCENSORED作品のメジャーな素材になっていることから見ても、日本語圏でもさらにCENSOREDが広がる余地は残っているはずだ。

ただ、アングロスフィアが主体のCENSOREDコミュニティに投稿される画像は、正直なところ日本人の好みとは離れた被写体ばかりに思える。オナニーしながら英語を(大した語彙は使われていないにせよ)読み解くのもなかなか高度な営みだろう。人種の違う彼らの興奮の機序は理解できても、Pornhubを見ているときのようなほんのりとした(しかも興奮に繋がらない)疎外感を覚えるのも事実である。

つまり、日本語圏のCENSORED――おそらくはANIMEキャラに日本語で検閲をかけるものが多いだろう――を作らない限りは、その魅力をより広く伝えるのは難しい。その手軽な方法としてCHKDRSに実験的な検閲機能が搭載されれば、一つの実験として意義があるはずだ。


――という記事の草稿を送る前に、検閲機能を搭載した同人作品ビューアのデモ版が送られてきた。仕事が早い。しかし、固定の黒塗りオンリーで動画は非対応……とりあえず隠せばいいんだよね?なんて明るい声が聞こえてくる気がする。

このアプリは出来そこないだ、使えないよ。部位は選べた方がいい、隠し方にも美学があるし、このバージョンは文字も入れられないみたいだ。あぁ、それに――まぁ、あとはこの記事を見せれば、いい感じにしてくれるだろう。


  1. アカウントごとに検閲レベルを設定したり、継続参加で称号を獲得できるゲーム要素を提供していることもある。管理者が高圧的なルールを敷く囚人と看守のロールプレイ的な面も持ち合わせがち。 

  2. 码(コードやモザイクの略)を打つ、でモザイクやぼかしによる加工を意味する中国語。 

  3. 餅+モ(モザイクの頭文字)で餅のようにベタベタに塗られた濃いモザイクを意味する韓国語。떡치다(餅つき)がセックスの俗語で、떡単体で性的なニュアンスを含むことがある。 

  4. 雑魚向けの海苔(黒い長方形による修正)で、いま筆者が作った造語。 

  5. 検閲は、これをしてはならない! 

  6. こちらは、性的な内容だけではなく法的にギリギリのパロディを隠すときにも使われていた。 

  7. その形から黒海苔と呼ばれている。 

  8. 黒人男性の性的優位性を前提にした世界観で、白人男性が自らのパートナーを譲り渡しベータ化するBNWO(Black New World Order)と呼ばれるアングロ圏特有のコンテンツが存在する。他言語圏でもこうした人種差別になりかねない思考を反転させた性癖が生まれている。より一般化したA国B国モノ(自国の女性が他国の男性に征服されるのを自国の男性が屈辱として楽しむ、あるいは他国の女性に性的な屈辱を与えられるのを楽しむコンテンツ)のようなもの。 

  9. 露出の多い格好で身体を強調するなどしてオナニーの対象になろうとする行為。「あたしでシコシコして~ん」の略。 

  10. 様々な女性に蔑まれながらパンツを見せてもらうシチュエーションをメインとした作品「嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい」の略。 

  11. 好意を寄せた女性に対して尽くしすぎたり言いなりになる男性を示す侮辱語。日本語では「ミツグくん」「カオナシ」「バチャ豚」などに近い。 

  12. Jerk Off Instructionの略で、いわゆるオナ指示のこと。 

  13. 「パートナーの獲得や性的関係を望んでいるのに諦めさせられた」と自覚し、その原因をアルファや女性に押し付けて敵対する者たち。日本語では「不本意の禁欲主義者」などと訳される。 

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